2010年1月10日日曜日

(リンク)「嫌消費」世代

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「クルマ買うなんてバカじゃないの?」。こんな話を東京の20代の人達と話しているとよく耳にする。車がなくては生活ができない地方でも「現金で買える車しか買わない」と言う。これはクルマだけの話ではない。衣食住などの様々な市場で、欲しがらない若者達が増えている。「アルコールは赤ら顔になるから飲みたくない」、「化粧水に1000円以上出すなんて信じられない」、「大型テレビは要らない。ワンセグで十分」、「デートは高級レストランより家で鍋がいい」などの発言を聞く。
図表 世代・収入別支出削減意向
Graf
 20代の彼らは、非正規雇用が多く、低収入層が多いからだと思われがちだが、実際は、他世代に比べて、男性の正規雇用率は65%、年収も300万円以上が52%と見劣りする条件にない。
 彼らは、消費をしない訳ではないが、他世代に比べて、収入に見合った消費をしない心理的な態度を持っている。このような傾向を「嫌消費けんしょうひ」と呼んでいる。顕著に嫌消費の傾向を持ち、消費好きの世代には予想できない発言をするのは特定の世代である。80年代前半生まれの「バブル後世代」である。
 ものが売れない理由は様々だ。バブル崩壊以後の構造的な要因としてあげられるのは、将来が不安、収入の見通しがよくない、低収入層が増えている、の3つである。不況下の2009年度からは、これに、月額賃金やボーナスが減少しているなどの短期的な収入減少要因が加わっている。さらに、もうひとつ追加したいのが、嫌消費世代が台頭し、影響力を拡大していることである。彼らは、節約すること、待って安くなってから買うということが既定値である。従って、彼らの辞書には「節約疲れ」の言葉はない。買って後悔すること、将来の負担になるリスクは回避しようとする。
 彼らは、思春期に、バブル後の混乱、就職氷河期、小泉構造改革を世代体験として持ち、共通の世代意識を共有している。「自分の夢や理想を高望みして周りと衝突するより、空気を読んで皆に合わせた方がいい」、と言う意識だ。この意識の背後には、児童期のイジメ体験、勤労観の混乱や就職氷河期体験によって植え付けられた「劣等感」があるようだ。「自己実現」をめざした40代以上の中高年の個人主義的な価値観とは対照的だ。もちろん、「自由気ままに生きたい」、「おひとりさま」意識の強い団塊の世代とは対極だ。こうしたユニークな価値意識が嫌消費と結びついている(拙著「『嫌消費』世代の研究」参照)。そして、この世代が嫌消費をリードし、下の世代である20代前半の「少子化世代」にも波及しているのが現状だ。
 彼らをどう説得するか。それが売り手の課題だ。景気が回復し、企業の業績がよくなって収入が増えれば、消費は拡大する。しかし、彼らは収入が増えても買わない。彼らの世代心理に接近することが大切だ。説得のキーワードは「スマート」にある。とにかく、割高な商品は嫌いだ。周りから「バカ」にされるからだ。外食は切り詰めているが、男性でも鍋や炊飯器は持っている。スイーツも作る。「話す携帯」は値段で選ぶが、「使う携帯」はコンテンツの豊富さで選ぶ。店では買わないが、情報が豊富なネットでは常連だ。海外には行かないが筋トレグッズは好きだ。彼らが買っているものには三つの条件が揃っている。[1]自分の趣味に合って、[2]節約に貢献してくれて、[3]皆から利巧と思われることである。
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http://www.jmrlsi.co.jp/menu/mnext/d01/2009/diamond200912.html